向日葵のマーダーミステリー

今年20周年を迎えた人気5人組アイドルグループの「FIVE☆COLORS（ファイブカラーズ）」、通称ファイカラ。 ドーム公演でもチケットは即日完売で、最もチケットの取りにくいアーティストと言われている。そのためチケットの高額転売が後を絶たない。 また熱狂的なファンも多く、「同担拒否」を宣言しているファンも多い。 今日ここに集まっている人たちもまさにそうだった。 ファイカラの熱狂的なファンでありながらも、好きなメンバーはみんな違う。なぜなら全員が同担拒否だから。 ここは社長令嬢の麗華の別荘で、現在オフ会が行われている。 麗華に誘われて春風、芽依、モモ、みおりんが集まっていた。麗華とはSNSで交流したり、コンサート会場で会ったりしているうちに仲良くなったが、他の参加者とは今日が初対面で、本名や年齢も知らない。 それでもライブ映像を観て、ファイカラの話で盛り上がって、楽しい時間を過ごすことができた。 しかし翌朝、麗華が死体となって見つかった。死体の状況からみて、他殺と思われる。 警察に通報しようとしたが、何者かによって5人のスマホは破壊されていて、外部と連絡を取ることができない。 ここまで送り届けてくれた麗華の執事は帰宅してしまい、迎えに来るのは正午頃の予定だ。 また、別荘がある場所は町から離れた山奥のため、歩いて助けを呼びに行くのも現実的ではない。 そうなると、麗華の執事が迎えに来るまでここで待つのが最善だろう。 その時、麗華の部屋に置いてあったノートに「同担拒否！裏切者は許さない！」と殴り書きされていることに気付いた。 このオフ会に集まった5人は同担拒否で過激派なファンばかり。 もしこの中に同担がいたら、何かが起きてもおかしくはない。 勢いで人を殺してしまうことも、考えられないことではないのだ。 こうして4人は迎えが来るまでの間、真相に近づくため話し合うことになった。

若者から絶大な支持を得ている「Treasure Stone （トレジャーストーン：通称トレスト）」というバンドがいる。 メンバーはボーカルのミズキ、ギターのタカシ、ベースのシンヤ、キーボードのジュン、ドラムのテッペイ。一昨年人気ドラマの主題歌に抜擢され、配信された曲は100万ダウンロードを突破。現在人気急上昇中の５人組のロックバンドだ。 彼らは今度リリースするアルバムの曲作りのため、所属している芸能事務所の大会議室に集まっていた。 夜遅くなり、他の社員たちが帰宅する。残っているのはトレストのメンバーとマネージャーの上田雛子だけ。 しかしメンバーたちが曲作りに勤しんでいる間に雛子が姿を消した。 翌朝、雛子は遺体で見つかった。事務所のビルの屋上から転落したらしく、警察は自殺と判断した。 しかしメンバーの一部はそのことに納得していなかった。 雛子が自殺するわけがない、誰かに殺されたのではないか、と…。 そしてドラマーのテッペイは驚くべき行動を起こす。 メンバーたちを自宅に集め、生配信しながら雛子を殺した犯人を捜し始めたのだ。 最初は戸惑っていたメンバーたちだったが、雛子が殺されたというのが事実なら犯人を捕まえたいと考え、一緒に推理することにした。 しかし、雛子の死亡推定時刻に事務所にいたのはトレストのメンバーだけ。 もし本当に他殺なら、犯人はメンバーたちの中にいることになる。 雛子は本当に誰かに殺されたのか。 もしそれが真実なら、犯人と動機は一体何なのか…。 彼らはマネージャーの死の真相を明らかにするため、事件当日のことを静かに語り始めた。

童話の人魚姫は、王子様と結ばれず泡になって消えてしまうという悲恋の物語。 しかしこの国にいる人魚姫は違った。恋愛ハウツー本を読みまくり、ありとあらゆる恋愛テクニックを使って隣国の王子様を落としていた。 そして人魚姫には友人がいた。白雪姫、シンデレラ、かぐや姫だ。 ４人は仲が良くていつもみんなで遊んでいた。だけど彼女たちはそれぞれ自分が一番だと思っていて、他の３人を見下していた。 そんなある日、人魚姫は王子様からプロポーズされた。それを自慢したくなった人魚姫はお茶会を開催し、そこで友人たちに自分の婚約者を紹介することにした。 お茶会当日。 王子様は姫たちの前に現れた瞬間、表情を強張らせた。しかも具合が悪いと言ってすぐに帰ってしまったのだ。 その翌日、王子様は自室で遺体となって見つかった。死因は毒死。 その時、人魚姫はお茶会での王子様の表情を思い出す。 怯えたような顔をしていて、まるで命を狙われていることを知っていたかのようだった。 万が一そうだとしたら、友人たちの中に彼と面識がある人物がいて、その人物に殺された可能性が高い。 果たして王子様を殺したのは誰なのか。 犯行動機は一体何なのか。 人魚姫の戦いが今始まる――

今日は地下アイドルのルナのファンミーティングが無人島で開かれている。 ライブをしたり、ルナと一緒にバーベキューしたりできる楽しいイベントだ。 浜辺に作られたステージに立ったルナは、「みんな来てくれてありがとう！」と叫ぶが、そこにいるのはマネージャーとたった数人のファンだけ…。 残念ながら、ルナは売れないアイドルだった。 ライブの後、ファンのみんなには１時間の自由時間が与えられる。 各々自由に過ごし、そろそろバーベキューが始まる時間になった。 マネージャーはルナを呼ぶために待機しているテントに向かう。 すると―― 「た、大変だ…！ルナが！」 ファンが慌てて駆けつけると、そこには背中にナイフが刺さったルナの死体が…。 ここは無人島。スマホは圏外だから警察に通報することもできない。 迎えの船が来るまであと３時間。 それまで何もせずに待つこともできるが、この場にいる人たちの想いは一つだった。 『ルナを殺した犯人を必ず見つけてやる！』

とある田舎町。ここには地元で有名な西園寺総一郎という資産家がいた。 彼が代表を務める会社は西園寺グループと呼ばれていて、様々な企業を買収して大きくなっていった。また犯罪ギリギリの商売も多いため、彼に恨みのある人物は数えきれないほどいるだろう。 総一郎には息子が３人いた。長男の司、次男の匠、三男の悟。 また、息子たちの母親である恭子は11年前に他界していて、今は40歳以上年下のすみれと再婚して暮らしていた。 そして今日は総一郎の69回目の誕生日。 西園寺家では総一郎の誕生日を家族全員で祝うというルールがあるため、実家を出て一人暮らししている息子たちも帰って来ていた。 しかし息子たちはすみれが財産目当てで総一郎と結婚したと思っているため、家族仲はぎくしゃくして、食事会は重苦しい空気で進んでいた。 自分の誕生日を笑顔で祝わない子供たちに総一郎は憤る。 「くそっ…お前たちのせいで気分が悪くなってきた。私は先に部屋に戻る」 総一郎が早々に部屋に戻り、その30分後に息子や妻も食事を終えて部屋に戻っていった。 翌朝―― 「皆さん、起きてください！総一郎様が…！」 住み込みで働く使用人の篠原の声で起こされた４人は、総一郎の寝室に駆けつける。 するとそこには頭から血を流して倒れている総一郎が…。 医者である司が総一郎の体に触れる。 「ダメだ、息をしていない。この状態だと、死後６時間以上は経っているだろう」 現在朝６時。６時間以上前ということは、日付が変わる前に総一郎は命を落としたことになる。そして後頭部に殴られたような痕があるため事故ではなく他殺の可能性が高い。 しかも昨夜は嵐で、近くで土砂崩れも起こっていたため、外部の者が侵入することはほぼ不可能。そうなると屋敷にいた人物が犯人ということになる。 長男、次男、三男、妻、使用人。 果たしてこの中の誰が総一郎を殺したのか。 そして殺害理由は財産なのか、それとも別の理由か…。 こうして５人は総一郎を殺した犯人を見つけるために動き始めた――