
鱗は剥がれて禊がれる
古より、竜は神として人々から崇められてきた。 全ての命を統べ、空を跨ぎ、海をも超える存在。 竜はこの世で最も誉れ高い生物だった。 しかし、竜は罪を犯した。 自らより下等な生物である人間と交わり、子を成したのだ。 竜と人の子は「竜人」と呼ばれて忌み嫌われた。 この世界には竜人を除け者としない稀有な国も存在した。 高く切り立った崖に囲まれたこの国では、神と人の血を継いだ竜人を特別な存在として扱った。 人々は竜人を歓迎し、供物を捧げ、その存在を奉った。 そして、竜人のために竜人だけが暮らす村を作った。 その村は、迫害され続けていた竜人たちにとって天国のような場所だった。 竜人たちはみな、幸せに暮らしていた。 ――この村の長が殺されるまでは。