
鈍器のような
ある嵐の日だった。屋敷に住み込んでいる2人のメイドと執事、そして主人とその夫人は激しく打ち付ける雨と風の中、いつも通りの日常を送っていた。 主人は書斎に籠り、いつものように山と積まれた書類とにらめっこしているのだろう。 雷の音がひときわ激しく鳴り響き出した頃、住み込みで働いているメイドの悲鳴が屋敷内に響いた。 屋敷にいたもの全員が悲鳴のした書斎へと駆け出した。 皆が見たものは、書斎で頭から血を流しながら倒れている主人の姿と、泣きながら主人の体を抱きかかえるメイドの姿だった。 部屋に置かれたアンティークの時計は、午後6時を示す鐘の音を静かに鳴らした。